SHINICHIROU BLOG 〜月はみていた〜

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Vol.1 「わたしは殺めた」

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雨の雫が、透明の水が流れる川に、
幾度となく叩きつける。
底にある大きな石の苔が揺れた。

山梨県道志村。

その前日、
日本の畜産業、
特に養鶏のケージ飼育の惨状、
世界の飼育密度と比較し
日本は異常であると話し合った。

本当は人間なんて優に越える跳躍力を持つ鶏が、
500日もの間身動きも出来ず、
劣悪な環境で人間の食べ物になる為に生かされる。
世界でも類を見ない程、悲しく非道な現実。
後進国日本。

そんな中、
山梨県道志村水源の森にお住まいの、
粟野さんご家族は
平飼いで鶏を飼育されている。
凶暴な雄鶏がいて、
雌鶏を守るため殺生するという。

「上田さん殺りますか?」

わたしは、躊躇した。
初めてのことだった。
だけど、引き受けた。
世の中を訳知り顔で語る前に、
しなければならないと感じた。
鶏を抱いたら温かかった。
察知した初めはかなり暴れた。
途中からは大人しくなった。

雨の降る川辺の石ころの上、
まな板を置き首をのせた。
鉈(ナタ)を振り翳す、
せめて一瞬で両断する。

しかし、
わたしは名ばかりの料理人だった。
硬い首の骨が繋がり血が吹き出して、暴れた。
周りが助けてくれた。
土砂降りの雨が、血を流した。
何度も何度も鉈を振り落とした。
その後はあんまり覚えていない。

皮を剥ぎ、捌くといつも見る形だ。
違うのは温かくて少し動くこと。

その場に居た全員で、
(糧になってくれてありがとう)
と伝えた。
わたしは
(上手に出来ず悪かった。
でも、お前のお陰で次は大丈夫だ。ありがとう)
と心の中で付け加えた。

体力と精神を擦り減らし、
大きな鶏1羽から、
捌いた肉を見たら、
我々が普段居酒屋等で食べている焼鳥が
恐ろしい程格安の値段で売られている事に気付く。
飲食先進国日本。

最後に、
粟野さんご家族と、
この機会をつくってくれた、
山梨の水源を守る
道志村キャンプ実行委員の皆様に
厚く御礼申し上げます。

わたしは何故か次の日の朝から、
起きる時に
「コッコッコッ…」
と言う様になった。

コケ~
上田慎一郎

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